オーナー様に聞く
あの時とこれから
今こそお客様の
お役に立ちたい
〜被災地で実感した
「商売の原点」〜
多賀城大代5丁目店 オーナー
Yoshiki Kobayashi
津波で店舗全壊、
残った商品を無償提供

2011年3月11日午後2時46分、最初の大きな地震が起きたとき、私は自宅で休憩中でした。

揺れが収まるのを待って車に飛び乗り、カーラジオで「津波が来ます、避難してください」という放送を聞きながら、お店に向かいました。到着してみると、お店にはお客様が殺到、ガラス片や商品が散乱する店内にはレジを待つお客様が列をなしていました。

すぐにお客様に「津波が来ます!避難してください!」と呼びかけ、店を閉めて逃げる準備を始めようと、ふと外を見ると、津波が家を押し流しながら、こちらに迫ってくる様子が目に飛び込んできました。これはまずいということで、店の鍵をかけることはあきらめ、すぐにスタッフと4人で走って逃げました。高台の避難所に到着して10分もしないうちに、お店は津波にのまれて、あっという間に水没。津波は映像などで見るとゆっくり動いているように見えるのですが、実際に目の当たりにするとすごい速さで押し寄せてくるんです。車や家を巻き込みながら、それはもうすごい勢いでした。

うちのお店も完全に水没し、建物の骨組みを残して全壊してしまいましたが、水が引いた店内には袋入りのスナック菓子やチョコレートなど、パッケージは汚れてしまったものの、中身は問題なく食べられるものも残っていました。そこで、近隣のお客様に声をかけ、お金はいただかずに、商品をお一人につき一つずつ、配らせていただくことに。すると、あっという間に200人くらいの長い列ができ、お渡しできる商品は1日でなくなりました。

その夜はスタッフと一緒にお店近くの小学校にいったん避難したのですが、その近くの石油コンビナートが爆発するという警報が鳴ったため、急遽移動することになり、結局、真っ暗闇の中を6時間歩いて自宅に戻りました。

被災1か月後に
移動販売をスタート

翌日、スタッフ全員の無事を確認した上で、いったん、お店に全員集まってもらいました。その時点で、お店を再開できるかどうかわからなかったため、まずはがれきの撤去作業を始めることに。しかし、被害の甚大さがわかるにつれ、内心では「もうこの場所で商売を再開できないのでは・・・」との不安が募り始めていました。

ちょうどそんなときに、本部が提案してくれたのが、車での移動販売の話でした。このまま不安な気持ちで過ごしているよりも、まずは復興のためにできることをしようと決意、その場で「ぜひ、やらせてください」と即答し、4月6日には移動販売をスタートさせることができました。移動販売車には普段はベンダーさんが配送用に使っている2トン車を利用。車内に商品を陳列してお客さんが買い物できるように本部が改造してくれました。販売場所はお店の駐車場と、少し離れたA地区の2か所。高台にあるA地区は津波の被害から免れたため、住民の皆さんの多くは避難所には行かず、自宅にいらっしゃいました。しかし、地区のスーパーが営業を取りやめていたので、「食料品や日用品の買い物に困っていらっしゃるだろうなあ」と思い、移動販売先にA地区を選んだのです。

お店が水没して、もともと店で使っていた発注システムは使えなくなっていましたので、移動販売で扱う商品は、仙台の直営店まで出向いて発注し、受け取る方式をとりました。往復は大変でしたし、発注できる商品の種類や数は限られていましたが、待っているお客様のために最低限必要な商品を取りそろえられたのは、とても嬉しかったですね。

移動販売で人気があったのは、やはり米飯やパンなど、普段から良く売れていた商品です。非常時だからこそ、お客様は普段食べていたものを食べたいんですよね。当時はまだ電気も復旧していなかったので、OFCが家から持ってきてくれた電子レンジを車のバッテリーにつないでお弁当やお惣菜を温めて差し上げると、すごく喜んでいただくことができました。同じくスタッフが自宅から持ってきてくれたガスコンロで湯煎した缶コーヒーも、すごく喜ばれましたね。今振り返ってみても、あの大変な状況の中でスタッフが知恵と力を出し合ってくれたことには、ただ感謝しかありません。

約2か月後に店舗再開。
胸に響いたお客様の「ありがとう」

移動販売をしながら、お店の再開の準備も進めました。大変でしたが、本部の協力もありましたし、何より移動販売を通じて、お客様から必要とされていることを実感できたことが大きな励みになりました。

そして、震災から約2カ月後の5月14日には何とか再オープンにこぎつけることができました。再オープンの日の感激は今も忘れることができません。震災当日に商品を無償でお譲りした方から「あのときは、本当にありがとう」、移動販売の常連さんからは「お店が大変なときに移動販売をしてくれてありがとう」とのお言葉をいただき、胸が熱くなりました。何より嬉しかったのは「やっぱり、セブン‐イレブンっていいね」というお言葉。震災直後、他のコンビニチェーンに先駆けて被災地支援に取り組み、営業再開を果たしたセブン‐イレブンの姿勢をお客様がちゃんと見ていてくださったことが、とても嬉しく、やはり商売の原点は「お客様の役に立つこと」だと改めて実感しました。

店舗再開にあたっては、お客様だけでなくスタッフにも、すごく助けられました。スタッフも皆、被災者で、中には自宅が水没して避難所生活になってしまった人もいましたが、それでも一人も欠けることなく付いてきてくれ、移動販売や再オープンの準備を手伝ってくれました。震災直後の混乱の中、「我さきに」という言動をとってしまう人もいる中で、窮地に追い込まれた今だからこそ「皆で協力してやっていこう」という結束力のあるスタッフに恵まれ、チームワークで前に進めたことが、オーナーとして何よりの財産になりました。

10年を経て、
絆はより強固に

震災で車を流され、買い物に行けず困っているお客様も多かったので、店舗再開後は「御用聞き」の役割を強化していくことにしました。震災の翌年からは本部からのお声がけもあり、「セブンあんしんお届け便」をスタート。近所での買い物が難しい地域のお客様のために、今も週5回ほど、専用車に弁当や日用雑貨を積んで各地を巡回しています。今では巡回を心待ちにしてくれる顔見知りのお客様も増え、大きなやりがいを感じながら取り組んでいます。

震災後の日々は本当に大変でしたが、ともにその困難を乗り越えたことによって、従業員との絆がより強固になったことには心から感謝していますし、当時の従業員の多くが今も働いてくれていることを、オーナーとしてとても嬉しく誇りに思っています。毎年、3月11日の朝礼には、あのときの気持ちを忘れないように、災害時に迷わずに行動できるように、そして記憶を風化させないように、私の想いを込めて書いた「朝礼シート」を、従業員の皆さんと共有しています。あのとき1つでも行動を間違えていたら、今はありません。あのとき生かされたから、今の自分があるのです。毎年、3月11日は、従業員さんと自分の心に、そのことを深く刻む日です。これからも、あの震災で得た教訓と感謝の気持ちを忘れず、地域の発展に貢献できるよう、がんばっていきたいと思っています。