食の安全と安心を科学する 本当に安全? 輸入食品Q&A

食の安全と安心とはどういうことか、食中毒や食品添加物についてなど、専門家があらゆる観点から解説します。

「輸入食品よりも国産食品の方が安全」という声をよく耳にしますが、実際はどうなのでしょうか?今回は「輸入食品」について気になるギモンを、食の安全と安心を科学する会(SFSS)の理事長の山崎 毅氏に解説いただきます。

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NPO法人 食の安全と安心を科学する会(SFSS) 理事長
山崎 毅

リスク学者/獣医学博士/東京大学農学部卒。専門分野:食のリスクコミュニケーション我々が本当に回避すべき食のリスクとは?気になる食の安全・安心の話題を科学的根拠とともに解説します。

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「食の安全の落とし穴 最強の専門家13人が解き明かす真実」小島正美/著 山崎毅/著

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Q1. そもそも輸入食品は表示でわかるの?

図1. 生鮮食品の表示例「エクアドル産バナナ」、図2. 加工食品を輸入した場合の表示例「原産国名アメリカ」

農産物・畜産物・水産物などの生鮮食品には、原産地表示が義務づけられているので、輸入食品であれば「原産国」がわかります(*図1)。加工食品を輸入した場合も、「原産国名」が必ず表示されます(*図2)。ただし、国内で製造した加工食品については、重量割合が一番大きい原材料のみ「原産地」や「製造地」が表示されるルールとなっています(*図3)。

すなわち、加工食品は表示だけでは輸入食材が含まれているかどうかが必ずしも明確ではなく、多くの加工食品で輸入食材が使われているのが現状です。だからと言って、輸入食材を使った国内製造の加工食品で、健康被害が多発しているという報告は、違法な輸入食品による事故を除き、聞きません。

Q2. 輸入食品は国産よりもむしろ安全かも?!

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「中国産は農薬が怖い」などという声をよく耳にします。過去に、中国からの輸入食品に農薬が混入し健康被害が発生した事件もありましたが、これは意図的な不正行為によるものであり、日本の食品安全システムが機能していないことを示すものではありません。それでも、海外の農場で農薬をたくさん使用されても、日本の消費者には知る術がないので不安だ、というのも理解できます。

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しかし国は、効率的かつ効果的な監視を行うことで輸入食品の安全を担保しています。日本との二国間協議による輸出国側での検査、輸入時の検疫での検査、国内での自治体や食品事業者による検査と、実に3点での厳しい監視を行っているわけです。食品安全の専門家たちも、輸入食品の安全性は国産にまったく引けを取らないと評価しています。

Q3. 「食の安全」は原産地情報に依存しません

輸入食品の検査違反率:アメリカ合衆国 0.726%、オーストラリア 0.662%、中華人民共和国 0.241%

週刊誌報道やネットで「中国産食品で基準値違反」などという記事を見かけることがありますが、「令和5年度の輸入食品監視統計」によると、中国からの輸入食品の検査違反率は他国と比較して高くありません。また輸入上位8国で違反率は1%未満であり、管理基準を超えたとしても直ちに健康被害にはつながりません。

食品の安全性は原産地で決まるわけではありません。原産地情報でリスクを判断し、食品を選択することに科学的合理性はないのです。グローバルな視点で輸入食品に頼らざるを得ない私たち日本人は、原産地情報を安全と結びつけるのではなく、原産地を「おいしさブランド」としてとらえ、食品を合理的に選択したいですね。

まとめ原産地表示は「食の安心」情報です

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ここまで述べた通り、輸入食品の安全は何重もの監視体制で担保されていますので、「中国産や韓国産は危険」といった不安を煽る報道に振り回されながら、食品を選択するのは賢い消費行動とは言えません。原産地表示は「食の安心」情報と捉えて、「食の安全」は製造品質管理の公開情報や実績をもとに評価して、食品選択すべきでしょう。

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輸入食品が食卓に届くまで~輸入食品の安全管理~(YouTube動画/厚生労働省HP)

日本には世界各国からたくさんの食品が輸入されています。

輸入食品が食卓に届くまでの、輸出国や輸入時、国内での安全管理について、「まもるん」と一緒に見てみましょう。

食の知識・学び ~ 加工食品の原産地表示 ~

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今まで一部の加工食品にのみ原材料の産地表示が義務付けられていましたが、加工食品の原料原産地情報への関心の高まりを受け、2017年9月に食品表示基準が改正され、国内で製造されたすべての加工食品に表示が義務付けられました。

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