残留農薬が検出されたというニュースを目にすると、人体への影響を心配される方も多いのではないでしょうか。
今回は、「残留農薬」について多くの方が抱くギモンを、食の安全と安心を科学する会(SFSS)の理事長である山崎 毅氏に解説いただきます。
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- NPO法人 食の安全と安心を科学する会(SFSS) 理事長
- 山崎 毅氏
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リスク学者/獣医学博士/東京大学農学部卒専門分野:食のリスクコミュニケーション我々が本当に回避すべき食のリスクとは?気になる食の安全・安心の話題を科学的根拠とともに解説します。
- 「食の安全の落とし穴 最強の専門家13人が解き明かす真実」小島正美/編著 山崎毅/著
Q1. 農薬はどんな役割があるの?どうして使うの?
「農薬」は英語で“pesticides(ペスティサイズ)”と訳されるとおり、農作物を害虫や病原菌、雑草などから守る薬剤の総称です(厳密には、農作物の成長促進剤や天敵利用なども含みます)。農薬を理解するには、農作物が野生植物ではなく、人が改良してきた“栽培種”であり、害虫や病原菌、雑草に弱い存在であることを知る必要があります。
- 食のリスクコミュニケーションフォーラム2021第2回 「我が国の農薬登録制度について」 小林秀誉(農林水産省)より
スーパーやコンビニエンスストアに並んでいる野菜や果物が、害虫に食われて穴だらけだったり、カビや細菌に汚染され腐っていたり、栄養価が不足して小ぶりであれば買いたいとは思わないでしょう。広い農地で農作物を安定して育てるためには、害虫・病原菌・雑草との戦いに勝たないといけません。その強い味方となるのが農薬なのです。
Q2. 農薬は危険なの?人体に影響はないの?
2008年には、中国製冷凍餃子から殺虫剤メタミドホスが検出され、健康被害が発生した事件が報告されました。しかし、この事案は意図的に農薬が食品へ混入されたものであり、通常の農薬使用とは異なる“犯罪行為” とされています。
一般に、農薬が高濃度で食品に混入すれば健康影響が生じ得ることは事実です。ただし、「毒か安全かは量で決まる」という格言の通り、毒性の強さだけで健康影響を判断することはできません。
- FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)による 「食品中の農薬残留:2024年報告書」
私たちが注目すべきなのは、食品中に残存する農薬(残留農薬)を摂取した場合の健康影響です。国内では 食品安全委員会(内閣府) が科学的なリスク評価を行い、国際的には FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR) が、生涯にわたり食べ続けても健康影響が生じないと考えられる一日摂取許容量(ADI)などを評価しています。これらの科学的評価を踏まえ、厚生労働省が残留農薬基準を設定しているのです。
Q3. 残留農薬の基準を超えるとどんな影響があるの?
まず知っておくべき点は、残留農薬基準は「安全か危険かの境界値」ではなく、市場の安全を維持するために設定された非常に厳しい管理基準であるということです(生涯食べ続けて健康影響が出ないレベルよりさらに低い値です)。したがって、「輸入野菜で残留基準超え」と報道されても、多くの場合、健康被害を心配すべきレベルではありません。「市場が適切に管理されている証拠」と冷静に受け止めると良いでしょう。
健康影響の心配がないとはいえ、基準に違反した食品が流通するのは不安ですよね。そこで輸入食品には、①輸出国での検査、②輸入後の検疫、③食品事業者による受け入れ検査という三重の検査体制が設けられています。
- 詳しく知りたい方はこちら:
食の安全と安心を科学する「本当に安全? 輸入食品Q&A」
まとめ残留農薬基準について正しく知りましょう
近年、環境への配慮から有機栽培が注目されていますが、高温多湿の日本では栽培・流通の難易度が高く、現状の食料供給を安定的に支えるためには農薬の存在が欠かせません。市場に流通する農作物で健康被害が起きないよう、残留農薬基準という管理基準が設けられ、私たちの食の安全・安心が守られているのです。
おすすめリンク
食品中の残留農薬等 (厚生労働省HP)
- 1.農薬の残留基準はどのように決められている?
- 2.食品中の残留農薬等はどのように検査されている?
- 3.ポストハーベストの規制はどうなっている?
- 4.日本と海外の農薬の残留基準値が異なるのはなぜですか?
- 写真はイメージです。










