トランス脂肪酸って一体なに？専門家が解説トランス脂肪酸 Q&A

「トランス脂肪酸」は聞いたことがあるけど、よく分からないと思っている方もいるかもしれません。今回は、トランス脂肪酸とは一体なにか、「トランス脂肪酸」に関する気になるギモンについて、NPO法人食の安全と安心を科学する会（SFSS）理事長の山崎毅氏に解説いただきます。

NPO法人食の安全と安心を科学する会理事長
山崎毅氏: リスク学者/獣医学博士/東京大学農学部卒。専門分野：食のリスクコミュニケーション我々が本当に回避すべき食のリスクとは？気になる食の安全・安心の話題を科学的根拠とともに解説します。

Q1. トランス脂肪酸ってなに？

トランス脂肪酸の種類のイメージ天然由来のもの（牛乳、バター、ベーコン）油脂の加工工程で生成されるもの（パン、サラダ脂、マーガリン）

トランス脂肪酸は脂質の一種で、「天然由来のもの」と「油脂の加工過程で生成されるもの」があります。牛や羊などの反芻（はんすう）動物の胃の中では、微生物の働きによってトランス脂肪酸がつくられます。そのため、反芻動物のお肉や、牛乳などの乳製品には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。

トランス脂肪酸とはトランス型の二重結合を含む多価不飽和脂肪酸の総称水素（H）が同じ側にあるcis型と水素（H）が反対側にあるtrans型のイメージ

詳しく知りたい方はこちら：農林水産省ホームページ『すぐにわかるトランス脂肪酸』

一方、常温で液体の油脂から固形の油脂をつくる加工工程でもトランス脂肪酸が生成されることがあります。そのため、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれている場合があります。

Q2. トランス脂肪酸は体に悪いの？

疫学研究データから評価されたトランス脂肪酸の健康リスクのグラフトランス脂肪酸の摂取量が増えると悪玉コレステロールが上昇する傾向が優位に認められた

内閣府食品安全委員会『食品に含まれるトランス脂肪酸』評価書（2012年3月）p44より改変し作成しています。

トランス脂肪酸の過剰摂取により、心臓病などのリスクが上がることがわかっています。世界保健機構（WHO）は図のようなトランス脂肪酸摂取量と悪玉コレステロール（LDL）上昇に関する疫学データをもとに、トランス脂肪酸の摂取量をエネルギー比率で1％以内にすることを推奨しています。

日本は欧米に比べてトランス脂肪酸の摂取量が少ないため、あまり心配する必要はないと言われています。一方、海外では、トランス脂肪酸の量を食品に表示したり、トランス脂肪酸を多く含む加工油脂の使用を禁じる国もあります。トランス脂肪酸自体が毒というわけではなく、塩分を摂り過ぎると高血圧が心配になるのと同様に、摂り過ぎは健康に良くないということです。

Q3. どんなところに気を付ければいいの？

トランス脂肪酸は、マーガリンなど以外にも、お肉、乳製品、植物油などにも含まれる脂質の一種であり、摂取量をゼロにすることはできません。ただし、トランス脂肪酸の摂り過ぎが健康に良くないことはわかっていますので、WHOの推奨するカロリーベースで1％以内を目指すのが理想であり、これは1日約2グラム未満が目安となります。

食品	トランス脂肪酸含有量100gあたり
食品	平成18年-19年調査	平成26年-27年調査	令和4年-5年調査
マーガリン	8.7g	0.99g	0.65g
ショートニング	12.0g	1.0g	0.61g

詳しく知りたい方はこちら：食の知識・学び「トランス脂肪酸ってなに？」

20年前であればクロワッサンを2～3個食べると、トランス脂肪酸量が2gを超えてしまう状況でしたが、業界の努力もあって今では、加工食品のトランス脂肪酸含量はかなり低減されました。また、日本人のトランス脂肪酸平均摂取量は、総エネルギーの0.3％程度となっております。

まとめ脂質全体の栄養バランスを考えましょう

PFCバランス（エネルギー産生栄養素バランス）（単位：％エネルギー）
年齢	目標量
年齢	たんぱく質	脂質	炭水化物
18～49歳	13～20％	20～30%	50～65％
50～64歳	14～20％	20～30％	50～65％
65歳以上	15～20％	20～30％	50～65％