ニュースでよく目にする「ノロウイルス」による集団食中毒。カキなどの二枚貝を食べて食中毒になることもあるようですが、集団食中毒の原因はカキだけではありません。今回は、「ノロウイルス」について気になるギモンを、食の安全と安心を科学する会(SFSS)の理事長の山崎 毅氏に解説いただきます。
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- NPO法人 食の安全と安心を科学する会(SFSS) 理事長
- 山崎 毅氏
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リスク学者/獣医学博士/東京大学農学部卒。専門分野:食のリスクコミュニケーション我々が本当に回避すべき食のリスクとは?気になる食の安全・安心の話題を科学的根拠とともに解説します。

- 「食の安全の落とし穴 最強の専門家13人が解き明かす真実」小島正美/著 山崎毅/著
Q1. ノロウイルスってなに?

ノロウイルスは、1968年にアメリカのオハイオ州「ノーウォーク」という町の小学校で発生した急性胃腸炎患者から発見されました。我が国では、小型球形ウイルスなどと呼ばれ、急性胃腸炎の原因として知られていましたが、1997年に食中毒の原因物質に加えられ、2002年には発見された町の名前に由来して「ノロウイルス」と正式名称が与えられました。20世紀の食中毒の統計には出てきませんが、昔から食中毒の原因だったようです。

- 「食の安全の落とし穴」(小島正美・山﨑毅著;女子栄養大学出版部刊)
「リスク5:ノロウイルス」p87~より
ノロウイルスといえば、生ガキを食べて「あたった」ことがある方もいるかもしれませんが、カキなどの二枚貝による食中毒は、ノロウイルスによる食中毒のうち約10%程度です。ノロウイルスは、感染者の便や嘔吐物から手指などを介して広がることが多く、二次汚染による集団食中毒が多いのが実態です。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、発熱は軽いことが多いです。
Q2. ノロウイルスの食中毒は、なぜ多いの?

- 厚生労働省 「食中毒統計資料(2014年~2023年)」のデータに基づき作成しています。
グラフの通り、厚生労働省食中毒統計資料によると、ここ10年間の食中毒患者の約半数はウイルスが原因で、その99%がノロウイルスです。食中毒を防ぐためには、ノロウイルス対策がとても重要ということです。例えば、生食用のカキはノロウイルスの検査をしていません。ですから、できるだけ加熱して食べる方が安全です。
ノロウイルスによる食中毒の多くは、食品取扱者の手指を介して食品が汚染されています。 学校給食やお弁当屋さん、惣菜屋さん、飲食店などで、調理する人が自分がノロウイルスに感染していることに気づかず、トイレから調理場にウイルスを持ち込んでしまうことが原因です。ノロウイルスに感染した人の便が0.1グラム指先に付いても、約1億個のウイルスが付くと言われています。
Q3. どんなところに気を付ければいいの?

ノロウイルス対策の基本は手洗いです。とくに調理する人は、トイレから出た時やキッチンに入る時は、しっかりと時間をかけて手を洗うことが大切です。洋式トイレでは、蓋を閉めてから水を流すなど、水が飛び散らないように工夫することも有効です。
ビニール手袋をしていても、手洗いを怠ると集団食中毒が起こることがあるので要注意です。
お弁当や惣菜をたくさん売っているコンビニエンスストアでも、ノロウイルス対策はとても重要な食品安全管理のポイントです。惣菜の製造工場では、専任者による体調確認や、一定時間の手洗い、全身専用作業着への着替えなど、製造エリアへ入室するまでのチェックや準備を入念におこなって、ノロウイルスが持ち込まれないようにしています。
まとめノロウイルス食中毒予防の基本は手洗いです
ノロウイルスによる食中毒を防ぐためには、調理する人や調理器具からの汚染、二次汚染を防ぐことが大切です。手洗いの徹底に加えて、トイレからキッチンに移動する時に着替えることも重要です。また、下痢気味の人は調理をしないようにすることも効果的です。
さらに、カキなどの二枚貝を含めて、ノロウイルスに汚染されている可能性のある食品は、加熱して食べるようにしましょう。